二人は嘘つきか?(2019、1,26)

最近、茂木弘道氏の「大東亜戦争 日本は勝利の方程式を持っていた」の著書を入手しました。そのなかの第5章「秋丸機関と歴史の偽造」は驚くべき内容でした。 秋丸機関の報告を「国策にあわないから焼却処分にせよ」の杉本参謀長の発言があったとする有沢広巳教授と秋丸次朗の証言は嘘だというのです。

秋丸機関の報告書をもとに「対英米蘭蒋戦争終結促進に関する腹案」の戦略が立てられ、日本が唯一勝てる戦略が生み出された。しかし実際は作戦の失敗で敗戦した。だから「決して軍部による無謀な暴走による戦争ではなかった」としている。  

しかし戦争に負けた後、日本の知識人などの知的なエリートは自分は戦争に反対したけれど弾圧されて自由にものが言えなかったなどの口実で戦前の発言の責任をとるよりもごまかして新しい時流に乗る現象が生まれた。有沢教授もその一人というのだ。さらに秋丸機関を組織化して推進した張本人の秋次朗までもが、同じようなことを言って醜い変節日本人の一人になっている。としている。

杉本発言が出てきた経緯を見ると昭和31年毎日新聞発行の月刊誌「エコノミスト」に有沢教授が「支離滅裂の秋丸機関」と題する中で教授は法事で軍部首脳に対する説明会には出られなかったが、後日、秋丸中佐から「杉本元帥は講評で調査及び推論の方法はおおむね完璧で間然するところはない。しかしその結論は国策に反する。したがって本報告の謄写本は全部これを直ちに焼却せよと述べた」と聞いたという。いわゆる伝聞である。

秋丸次朗は昭和61年に「朗風自伝」のなかで「すでに開戦不可避と考えている軍部にとって、都合の悪い結論であり、消極的平和論には耳を貸す様子もなく、体制は無謀な戦争へと傾斜した」と書いている。これには杉本発言そのものは書かれていないが、これをもって茂木氏は二人をうそつきと断じているのである。

秋丸次朗は「朗風自伝」で「軍政機務に参画し、敗因素因の一端を負担すべき地位にあった関係上、敗軍の将と同様に、兵を談ずる資格はないことを自覚して黙して語らずのという姿勢を守ってきた。やはり自分の軍人として果たした役割を忌憚なく記録して残すことも後世のために何らかの価値があると痛感した」と述べている。

有沢教授の伝聞、30年たってそれを裏付ける秋丸の記述。二人が口裏を合わせてうそをつく必要があったのだろうか。「あなたは後世にウソつきと言われていますよ」と言ったら親父は何と言うだろうか。

歴史の史実には様々な見方があり現在でも論争の続いているものもある。しかし、自説を主張するためにうそつきに仕立てあげ故人であっても人格を傷つけてよいものだろうか。

秋丸機関について詳しくは秋丸機関