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TITLE:[視覚障害者の情報アクセスにおける現状と課題]
RELEASED:1996/08/02
UPDATED:1997/03/10
WRITTEN by : 湯浅 幸洋
 これは、視覚障害者(全盲)当事者として、私の勤務する某メーカーの福祉機器関係者に対して提出したレポートのリライトバージョンです。
 最近、福祉機器分野については、いろいろなメーカーも本腰入れて取り組むようになってはきていますが、いかんせんここ最近の取り組みですからまだまだ障害そのものを深く考察するところまでは至っていません。
 当事者にとっては、あまり役に立たない製品や、なにやら妙なコンセプトで開発された製品をよく見かけることがあるでしょう。 これは結局、開発側が[知らない]ことに起因するものです。
そのこと自体を批判しても仕方がありません。
当事者自身も、面倒ではありますが、根気強く[障害とはどんなものか][何が問題なのか]をぶつけてゆく以外にありません。

以下のレポートは、そうした背景で作成しました。わかる人にとっては[なんだこんなもの]です。(笑)
でも、あえてこうしたことを地道に続けてゆくこともこれまた必要です。

 何かの参考にでもなれば、ということで、少々恥ずかしいものでありますがここに公開します。

                               湯浅 幸洋
                                                          YUKIHIRO YUASA
                            OFFICE E-MAIL:YUASA@P411-2111.STAR.NEC.CO.JP
                                          YUT75418@PCVAN.OR.JP
                           PRIVATE E-MAIL:BPJ19414@PCVAN.OR.JP
                                          JCF04260@NIFTYSERVE.OR.JP

−− CONTENTS −−

 1. 視覚障害者とは?
 2. 「視覚障害者における情報の必要性
 3. 現状における情報アクセス手段
 4. 現状における課題及び、対処方策
 5. まとめ

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1. 視覚障害者とは?

 1−1 視覚障害者とは?

 厚生省社会援護局更正課発行[視野障害認定の手引](1995年4月発行)によると、以下のように規定されている。

-----------------------------
新しい視野障害の等級表級別

 1級・2級 : 両眼の視野がそれぞれ10゜以内でかつ両眼による視野について          視能率による損失率が95%以上のもの。  3級    : 両眼の視野がそれぞれ10゜以内でかつ両眼による視野について          視能率による損失率が90%以上のもの。  4級    : 両眼の視野がそれぞれ10゜以内のもの。  5級    : 両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの。 ------------------------------

 なお、視能率については、以下のような算定式によって導かれる。

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視能率について

 視能率は、視覚の機能障害の評価法の一種で、機能が健常であれば視能率は100%となります。また、視力が全くない場合は、視能率は0%となります。通常「視能率の損失率」で障害の程度を表す慣行となっていますので、健常では損失率0%、視力が全くない場合は損失率100%ということになります。
 視野障害の視能率を求めるには、視野計を使い8方向の残存視野の角度を測定しそれを合計したうえで、その結果を560で除算します。ここで、560で除算するのは、平均的な日本人の場合、同じ方法で計算するとその合計が560度になるので、それとの比較をしています。

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 そしてこれらに視力が加味される。
 従って、留意すべき点として
 ・視覚障害者 = 盲人 ではないこと。
 ・視野・視力ともに個人差が非常に大きいこと。
があげられる。
 また、色覚異常についても、視覚障害認定基準には明記されてはいないが考慮する必要がある。

 1−2.視覚障害の具体的なパターン

 簡単にまとめると、以下のようになる。
 ・視力障害。
 静止視力が、強制によっても、一定水準に達しない。すなわち、焦点調節が困難な状態。
 ・視野狭窄。
 視野の一部が欠損する。周辺視野が狭くなる他に、中心視野のみの欠損、虫食い状の欠損があるケースも多い。
 ・色覚異常。
 特定波長の色のみが認識できない状態、すなわち色盲と、特定の色が別の色に見える状態、すなわち色覚異常に大別される。
 ・明暗順応障害。
 暗所から明所、その逆の明所から暗所へ移動した時、順応が遅い場合と、明るい場所では常にまぶしい状態や、暗い所では見えない、という、順応自体がなされない、という状態とがある。
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2. 「視覚障害者における情報の必要性

 2−1.視覚障害によるハンディとは?

 先に延べた「視力・視野・色覚・明暗順応」において、項目別に、それがもたらすハンディをまとめてみる。
<視力>
 焦点合わせが困難になる、つまり事物の形が認識できなくなる。
 従って、以下のハンディが生ずる。
 ・事物の形状認識が困難。
 ・文字情報を正確に把握できない。
 ・上記により、危機回避能力が低下する。
<視野>
 中心視野が欠落する場合と、周辺視野が欠落する場合、さらに虫食い状に視野が欠落する場合とにおいて、差異があるが、総体的には、以下のようなハンディが生ずる。
 ・事物の全体像把握が困難。(2次元的広がりを把握できない)
 ・上記により、危険回避能力が低下する。
<色覚>
 ドロップアウトカラーがある場合と、正しい色認識ができない場合があるが、以下のようなハンディを生ずる。
 ・ドロップアウトカラーがある場合は、視覚情報の一部が完全に欠損する。
 ・色彩による危険察知能力が低下する。
<明暗順応>
 「明暗」という周辺状況変化が起こらない限り、基本的にはハンディは生じない。しかし、「明暗」変化が激しい場合は、上記のハンディがすべて該当する。
 以上から、「視覚障害者」のハンディとは、
 ・事物・文字の認識が困難もしくは不能
 ・空間的・2次元的広がりの把握困難または不能
に集約して考えることができる。
 すなわち、あらゆる局面において、情報入手が困難もしくは不可能ということである。

 2−2.情報の必要性

 「情報の必要性」を再認識するため、「情報が無い」ことによる弊害を、以下に羅列してみる。
 また、情報には大別して、INTELLIGENCEに係わるものとINFORMATIONに係わるものとがあるので、項目末尾に記載する。

<日常生活において>
 ・行政情報、住民サービス情報の入手不能による、住民としての利益の逸失。
 ・企業広告情報の入手不能による、消費者としての利益の逸失。
 ・空間把握の困難による、機器回避能力の低下。
 ・空間把握の困難による、自分の相対的位置把握の困難。
  (INFORMATION)
 ・報道情報の入手不能による、一般知識の絶対量欠如。
 ・出版情報の入手不能による、知識の蓄積の欠如。
  (INTELLIGENCE)
 例えば、チラシが読めないから(INFORMATIONの欠如)安売り情報を見逃した。
 ベストセラーの本が読めないため(INTELLIGENCEの欠如)、周囲の人間との話題共有に苦労する。
 外出時に、自分がどこにいるのかわからなくなる。(INFORMATIONの欠如 )
ということである。

<教育、研究分野において>
 ・教科書等の参照不能による、知識の蓄積欠如。
 ・参考文献の参照不能による、知識の広がりの阻害。
  (INTELLIGENCE)
 教育、研究においてはINTELLIGENCEに係わる情報が必須であるため、その入手が阻害されることは致命的な事態である。

<就労において>
 ・業界の動向、トレンドなどの把握が困難。
 ・職場レイアウト把握、通勤途上での危険察知が困難。
  (INFORMATION)
 ・社内資料などが読めないため、業務知識習得が困難となる。
 ・体感的に拾得しなければならない動作の把握が困難。
  (INTELLIGENCE)
 例えば、市中金利の動向が把握できない(INFORMATIONの欠如)により、資産運用に失敗する。
 基本的なビジネスマナーとしての身のこなしを、他人の動作から拾得することができない。(INTELLIGENCEの欠如)
ということになる。
 社会環境の中では、個人はその相対的位置づけ、を周囲の情報(INFORMATION)から把握する。
 また、自我形成課程においては、過去の人間の英知(INTELLIGENCE)をいかに吸収するかが重要なポイントとなる。
 視覚に障害を持つことは、これらの情報が、一般晴眼者のそれと比較した場合、程度の差こそあれ、確実に欠損していることを意味する。

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3. 現状における情報アクセス手段

 3−1.情報アクセスを可能とするために必要な処理

 視覚障害者が情報にアクセスするための手段としては、音声、触覚といった代替情報伝達手段をもって対応する方法と、文字拡大、色彩調整、コントラスト調整といった補正処理によって対処する方法との2つがある。
 前者は、完全なメディアコンバートを必要とし、後者はフィルタリング処理が必要となる。
 これらの処理を施すことにより、情報へのアクセスが可能となる。

 3−2.具体的な情報処理方法

 情報形態別に、どのような処理方法があるのか、記述する。詳細については、3−3を参照のこと。

 ・文字情報
   → 音声朗読
   → 拡大表示
   → 色調調整コピー、拡大コピー
   → 点字化

 ・イメージ情報
   → 音声による注釈
   → 拡大表示
   → 色調調整コピー、拡大コピー
   → 触図化
   → 文字情報による注釈文を作成した上、点字化

 ・3次元的空間情報
   → 音声・振動によるガイダンス
   → 触読可能な形態でのマップ作成
 3−3.情報処理方法詳細

 3−2で上げた情報処理方法について、詳細な解説を加えてみる。

 ・音声朗読
 文字情報を音声で朗読する。
 人間によるものの他、文字情報を電子テキスト化し、音声合成装置によって朗読させる方法もある。 また、OCRと音声合成装置を連動させ、リアルタイムで情報を電子テキスト化し機械朗読をさせることも可能となっている。
 ・音声による注釈
 イメージ情報を言葉で表現する。
 これを電子テキスト化することで、音声合成装置による音声解説も可能となる。イメージを言葉にする部分は、現在は機械化は不可能。
 ・拡大表示
 拡大読書器により、光学的に対象文字・イメージ情報を拡大する方法と、コンピュータディスプレイに表示された文字・イメージ情報を電子的に拡大する方法とがある。いずれの方法でも何らかのハードウェアは必須。電子的画面拡大システムの場合は、色調、コントラストの調整も可能である。
 ・色調調整コピー、拡大コピー
 最近のカラーコピーマシンは色調、コントラストを自在に設定することが可能となっている。これを利用し、色調、コントラストの補正を行うことが可能となる。また、拡大コピーについても、縦横拡大倍率調整をすることにより、対応可能範囲は広がっている。
 ・点字化
 文字情報を触読文字である点字に変換する。
 ・点字板を用いて1文字づつ手作業で作成する方法
 ・点字タイプライタを用いる方法、
 ・点字文法に準拠した形で、ワープロなどでかな入力を行い、点字データに変換した上、点字プリンタで印刷する方法
 ・ワープロなどで漢字かな混じりの原文データを作成、自動点訳支援ソフトにより点字文法に準拠したかな文章を作成、点字データに変換した後点字プリンタで印刷する方法がある。
複製の容易さから、電子データ化する傾向が強くなっている。それに伴い、著作権処理の問題が急浮上している。
 ・触図化
 イメージ情報を、触覚で認知できるようにする。
 発泡インクを用いて、立体コピーを作成する方法と点図プロッタを用いて、点図を作成する方法とがある。 かつては絵柄のアウトライン上に糸を張り付ける方法をとっていたが、現在ではほとんど用いられていない。
 ・文字情報による注釈文を作成した上、点字化
 イメージ情報を文章で表現し、それを点字の形で提供する。点字作成は先述のパターンのいずれかとなる。文章表現にコンバートするのは、現時点では機械化は不可能。
 ・音声・振動によるガイダンス
 定点にあらかじめ設置された音源によって誘導、警告をする方法と定点に設置されたフェライト板に接近すると反応するセンサーを用いて誘導、警告を行う方法がある。また、簡易レーダーシステムにより、障害物を察知する方法もある。
 ・触読可能な形態でのマップ作成
 地図を先述した方法で触読可能にする。3次元的な位置関係を把握しやすくするために、立体地図を作成することもある。

 以上の方法を用いることにより、情報アクセスは可能となる。
 また、注目すべき点としては、これらの処理については電子的処理が有効であるケースが非常に多いということである。 例えば、点字化作業においては、手作業で紙に直接点字を打ってゆくよりはワープロ上で入力した方が修正、加筆は容易である。 また、複製を作成する場合は、電子データから点字プリンタで印刷することがもっとも効率的である。 ピンディスプレイのようなデバイスを点字プリンタの代わりに接続することで、ペーパレスも実現できる。 拡大表示、色調調整、コントラスト調整なども、コンピュータ画面上て任意に調節できるため、パーソナライズが極めて容易となる。
 音声朗読についても、電子データを音声合成装置が読みあげる方式を採用することで 音質、スピード調整が容易となり、内容検索も容易となる。 OCRは機械による目の代行を可能とするものであり、認識率の向上が期待される。
 これらの機器を活用するためには、情報の電子化作業が必須となるが、これはまた大きなメリットをもたらす。 INTERNETをはじめとする、各種情報通信網を解してこれらの情報の交換がスピーディに行えるようになるからである。

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<参考資料>

 いくつかの情報アクセス手段を挙げてきたが、
その中には勿論極めて有効なものもあれば、そうでもないものもある。
 以下は、個人的見解として、アクセス手段別の有効性をまとめた表である。

 ※ 縦に「情報種別」、横に「アクセス手段」。
 ※ 有効性は、「専門性」、「即時性」の2つの判断基準に分ける。

        <点   訳> <音訳・朗読> <TVラジオ> <PC通信>
        専門性 即時性 専門性 即時性 専門性 即時性 専門性 即時性
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
行政情報・広報  △   ○   △   ○   △   ○   ○   ○ 
行政情報・通達  △   △   △   △   △   ○   ○   ○ 
行政情報・白書  ×   ×   ×   ×   △   ○   ○   ○ 
行政情報・統計  ×   ×   ×   ×   △   ○   ○   ○ 
生活情報・家庭  ○   △   △   △   ○   ○   ○   ○ 
生活情報・購買  ×   ×   △   △   △   ○   ○   ○ 
生活情報・知識  ○   ×   ○   △   ○   ○   ○   ○ 
学問研究・研究  ×   ×   ×   ×   △   ○   ○   ○ 
学問研究・教科書 ○   △   ×   ×   ×   ×   △   ○ 
学問研究・文献  ○   ×   ×   ×   ×   ×   ○   ○ 
就労・業種知識  △   ×   ×   ×   △   ○   ○   ○ 
就労・業務知識  ×   ×   ×   ×   △   ○   ○   ○ 
 点訳情報、朗読情報については、従来から視覚障害者のメディアとして認知されているため、過去の蓄積はあり、行政情報なども提供されるようになっている。 しかし、リアルタイム性に著しく欠けており、マジョリティのニーズを満たすために、アミューズメント系の情報に偏っているという問題がある。 即時性と専門性の強化が課題である。
 テレビ、ラジオといったマスメディアは、リアルタイム性という点では有効であり、専門性もある程度は満たされている。 ただし、情報の蓄積と再利用という点では利便性に欠ける。 また、読書、専門研究のように特定テーマを対象とした情報提供は 不得手なメディアであるため、ここが課題になる。
 PC通信は、情報通信ネットワークと、コンピュータが融合したメディアである。 情報はすべて電子化されているため、機械的なメディアコンバートにも対応しやすく、リアルタイム性も確保されている。
 また、電子化情報は、その蓄積、再加工が極めて容易なため、利便性についても有効である。  さらに、昨今の情報通信ネットワークインフラの整備に伴い、マスメディアとしての 性質も強まっているため、従来マスメディアの参入が盛んになりつつある。 行政情報についても、利用者の裾野の広がりを受けてネットワーク上で提供されるケースが増加している。 従来の利用目的のひとつであった、学術的情報交換とあいまって、 その情報の質・量は爆発的に向上している。
 情報通信ネットワークの弱点であった商業出版についても、課金システムが確立 してきたことにより参入業者が増加しつつある。
 [電子書店パピレス](富士通関連会社)、[アスキーオンラインノベル](株式会社アスキー)などは、従来の紙ベース出版を電子化して販売する試みであり、[INTERNET Watch](株式会社 インプレス)、[毎日新聞記事配信サービス](毎日新聞社)などは、電子メールを利用したリアルタイムの報道を目指すものである。
 また、[インサイダー](島情報メディアネットワーク)、[電脳草子](NIFTY 本と雑誌クリエイターズフォーラム)などは、従来出版メディアにとらわれず、全くのオリジナル情報を提供してゆこうという試みである。
 情報通信ネットワーク上への爆発的な情報流入により、上の一覧表では、PC通信がほぼすべて○で埋められることになった。

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4. 現状における課題及び、対処方策

 4−1.現状の課題

 情報通信ネットワーク上には、現在驚異的なスピードで情報集積がなされており、その種類、提供主体もさまざまである。
 現時点(1996年8月現在)において、入手できる情報カテゴリは以下の通りである。

 ・官公庁・自治体情報
   → 行政ガイド、広報、報告書、指針・施策、地域統計、地域の歴史、
     観光ガイド、名産品・・・etc.

 ・生活情報
   → 趣味・娯楽、福祉・医療・ボランティア、旅行・宿泊・
     オンラインショッピング、新聞、出版・・・etc。

 ・教育情報
   → 学校紹介、研究発表、教材テキスト、遠隔教育、電子図書館・・・etc.

 ・ビジネス情報
   → 企業紹介、オンラインショウルーム、コンサルテーション、専門雑誌、
     求人求職・・・etc.

 ・その他
   → 各種マップ、個人情報発信、政党紹介、宗教・・・etc.
 官公庁・自治体のすべてが情報発信を行っているわけではないし、ありとあらゆる図書が提供されているわけでも勿論ない。 しかし、この2から3年の間に情報提供主体の数は、数十倍程度増加しており、情報の種類も非常な勢いで多様化しているため、近い将来、ほぼ必要十分な情報はネット上に揃うと考えて良いと思われる。

 上はあくまでも、日本国内において、という前提である。
 英語使用を前提として、全世界のネットワーク上の情報資産を利用する、とすれば現段階において、すでにありとあらゆる情報は入手可能となっていると考えても問題ない。
 しかし、それではネットワーク利用を前提として、そこにある情報資産を利用することを想定した場合、視覚障害者の情報ハンディは完全に解消されるのか、といえばそうではない。
 ネットワークが大衆化し、利用者が一般社会のマジョリティとなってゆくことにより、新たな課題が生じてきている。
 ここでその課題を洗い出してみる。

 ひとつは、ネットワークアクセスのための機器の問題である。
 GUI化の進行により、視覚障害者に利用しやすいインタフェースが失われつつある。 視覚を前提とするインタフェースは、視覚障害者にとっては全く操作できないものとなる。
 もうひとつは、ネットワーク上に蓄積される情報の形態が、グラフィックスを多様したものになってきている点である。 イメージ情報がグラフィックスで表現されることは当然ではあるが、文字情報までもがWysWigを意識してグラフィックスで表現されるようになってきている。
 構造化されたテキストデータであれば、それをプレーンなアスキーコードに変換することはさほど困難ではなく、従って、代替メディアへのコンバートも容易であるが、例えばスキャニングデータのように、文字そのものがひとつのイメージとして扱われる場合には視覚障害者はディスプレイ上でそれを認識することはできない。 もっとも、弱視者の場合は、それを拡大、色調・コントラスト調整を施すことで認識は可能である。
 ネットワーク利用においての課題は、上記から、アクセス端末、情報コンテンツのアクセシビリティをいかに確保するかということになる。

 4−2.課題対応策

 ネットワークアクセスにおいての課題は、アクセス端末のユーザインタフェースの確保と、情報コンテンツのアクセシビリティ確保である。
 これを実現するためにはどのような手段があるか、以下にまとめる。

<ネットワーク端末のユーザインタフェース>
 これは大きく2つに分けて考える必要がある。
 ひとつは弱視、色覚異常のようにある種のフィルタリングによって情報を認識できる者を想定すること。 もうひとつは、全盲者のように、画面情報を代替メディアにコンバートしなければならない者を想定することである。 どちらか一方のみを想定すると、対応を間違う結果となる。
 前者の場合、求められるインタフェースは、ひとつはフィルタリングにより十分にパーソナライズされた画面であり、もうひとつはその画面でも操作性を低下させないようなポインティングデバイスや入力システムである。
現状では、画面拡大、色調調整などのフィルタリング処理については、各種の製品が発売されており、Windows95のようにOSレベルでフィルタリングをサポートする物も出てきている。 ただし、現状のGUI画面は、画面の全体像を把握しなければポインティングデバイスによる操作は難しい。 アイコンの数を減らし、シンプルな画面構造を指向してゆく必要がある。 また、キーボード入力についても、入力情報の音声フィードバックによって内容を即座に確認できるようにする工夫も必要である。
 後者の場合は、画面情報を音声、ピンディスプレイなどで把握できるようにする必要がある。 GUI画面は、それをそのまま音声化したとしても、操作性は向上しない。 WINDOWSの場合は、グループアイコンや選択ウィンドウのオープン・クローズ、ウィンドウの切り替えはショートカットキーにより直接キーボードでコントロールできるようになっているため、このショートカットキー操作を音声ガイドをもとに行うという方法が想定できる。
 現在、労働省と通産省が手がけているのがこの研究である。
 ただし、肝腎なアプリケーションソフトの画面は、グラフィックスによって表現されているため、これを直接音声などで確認するためにはアプリケーション側での対応が必須となる。

* 注:労働省の研究成果については、1996年末に
*   [95リーダー]という製品が発売され、ユーザを獲得しつつある。
*   通産省の研究については[カウンタービジョン](仮称)という製品名で
*   1997年中にはリリースされる予定。
 MICROSoft社が音声による操作が可能なOS開発に着手し、そのOs上でアプリケーションを動作させるための標準化ガイドラインを先日発表しているが、アプリケーション開発側がこのガイドラインを受け入れるかどうかがポイントとなろう。 なお、これは米国本社での動きであって、日本での対応は全く不明である。

* 注:1997年3月現在、特に新しい情報は無し。

 IBMは、独自OsであるOS2を音声で利用できるようにしており、日本語対応版も本年中に発売する。 しかし、これも上記同様、アプリケーション側の対応が必須であるためありとあらゆるアプリケーションにおいて、盲人が快適に利用できる環境が実現するかどうかは全く不明である。

* 注:1997年3月現在、OS2の
*    日本語版スクリーンリーダーは販売されている。
*    NETSCAPEの一部機能、EXCELの一部機能については
*    音声フィードバックにより使用可能となっている。
 従って、全盲者の場合は、GUIOSが音声によって操作できるようになり、そのOs上で利用できるネットワークアクセスソフトが完成するのを待つか、すでに技術的には確立しているMs−dosの音声利用環境上でネットワークアクセス環境を構築してゆく必要がある。
 MS−DOS環境では商業パソコン通信へのアクセス環境はすでに確立しているため、課題はINTERNETへのアクセスとなる。
 現在、DOS−Vの世界においては、DOS−LYNXというフリーソフトが存在し、98DOSの世界では、VOICE NETという有償ソフトウェアが存在している。 こうした製品がどれだけ増えるか、どこまで普及するかが注目されるところである。

<情報コンテンツのアクセシビリティ確保>

 ネットワークアクセス端末が整備されたとしても、それで問題は解決しない。 ネットワーク上に存在する情報が、その端末で十分に内容把握ができるものでなければならない。 コンテンツ作りについてのガイドライン設定が必要である。
 例えば、画像データには必ずテキストデータによる注釈をつける、文字情報は、極力構造化されたテキストデータで流通させる、ネットワークの画面は、ビジュアル情報のみで構成されないようにする、などである。
 これについては、すでに良い資料が提示されている。
 [すべての人にアクセス可能なHTML文書を書く]である。
 このレポートが掲載されている堀之内さんのホームページからもリンクが張られているので、ぜひとも参照されたい。
 INTERNET上のホームページをターゲットとして記述されているものであるが、このコンセプトはあらゆるネットワークに応用できる。 官公庁、自治体といった公共性の高い情報発信主体から、これを採用してゆくことが必要である。

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5.まとめ

 情報がネットワーク上に集約されつつある昨今においては、情報アクセスの実現は、ネットワーク利用環境の整備と言いかえても過言ではない。 勿論、点字、朗読といった従来の代替メディアがそれで存在意義を失うものではない
。  しかし、点字や朗読というものは、そのままでは利用できない情報をメディアコンバートするものであった。 情報そのものが電子化され、ネットワークに直接送り込まれるようになった今、それをダイレクトに利用できる環境を整備することの必要性は誰にも否定できない。
 とはいえ、残念ながら視覚障害者本人、リハビリテーション関係者、支援機器開発関係者の意識は未だ低いと言わざるを得ない。 確かにネットワーク利用は、パソコン利用と言っても良く、それを知らないものにとっては未知の領域である。 しかし、知らないのなら勉強すれば良いし、インタフェースが悪いのならそれを改善してゆけば良い。 それだけのことで、ネットワーク上に蓄積されている情報はただちに視覚障害者のものとなるのである。
 情報は日々増殖しているし、アクセスするための機器についてもペースは遅いながらも確実にレベルアップされ、操作性も向上しているのである。 もっともネットワーク上の情報コンテンツは、昨今のマルチメディアブームにより、ビジュアル化の一途をたどっているのは事実である。 このままでは近いうちにアクセス不能となる可能性もある。

今回この資料をまとめたのは、そうした状況に対する危機感からである。
 食わず嫌いの視覚障害者、当事者意識の無い関係者、そうした者が大部分である限り、ネットワークアクセスは活発にはならない。 その間に視覚障害者の存在に気づかない情報発信者は、そのコンテンツをますますビジュアル化、VR化してゆくであろう。 そうなると、ネットワークは現実社会と全く同じものになる。 バリアフリー、アクセシビリティ確保のために、当事者・関係者は一からの努力を再び経験しなければならなくなるであろう。 そうならないためには、まずはネットワーク利用者を増やさねばならない。 ネットワーク市民としての視覚障害者の存在をアピールしてゆく必要がある。
 今回はそのような視点から、情報がネットワークへ向けて流れ込んでいること、利用環境は整備されつつあることをまとめてみた。

 [パソコンは操作が難しい]とか[通信にはコストがかかる]といった枝葉末節な議論の前に、それがもたらす可能性、価値について考える参考になれば幸いである。

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参考URL
<視野障害認定基準関連>

 東北大学 小林先生のホームページ
  http://www.dais.is.tohoku.ac.jp/~iwan/

<アクセシビリティ支援機器関連情報>

 マイクロソフトにおけるアクセシビリティ研究
  http://www.microsoft.com/windows/enable/
イネーブルウェア研究会(東京大学)
  http://tron.is.s.u-tokyo.ac.jp/TRON/EnableWare/
IBM KOKORO−Web
  http://www.ibm.co.jp/kokoroweb/index.html
東京女子大学 小田先生のホームページ
  http://www.twcu.ac.jp/./persons/mure/odalab/k-oda/AccessBlind/
  AccessTechBlind.html