呼吸循環管理プロトコール

救急治療室


目次

  1. 呼吸管理
  2. 循環管理


1.呼吸管理

  呼吸管理の原則はまず、挿管は早めに!抜管は遅めに!である。”意識状態が悪い”とか”呼吸状態が悪い”とか思ったらまずは経鼻挿管して気道を確保する。状態が許せば血液ガス検査を先行させてもよいが、気道確保を先行させてもなんら差し支えない。

呼吸管理プロトコール

  当院における呼吸管理はサーボベンチレーター(サーボ900C)インスピロンを主とする。サーボにおける自発呼吸はDemand valve typeであり、Constant flow typeなどのように自発呼吸にうまく対応出来ないところもあるが、現在のDemand valveのDelay timeは約50msと改善されており、PSモードも具備しており、これをうまく組み合わせることにより、最新の呼吸管理が出来る。

サーボベンチレーター

  サーボの特徴は低酸素血症が強度の場合など、強力に患者を鎮静化させ、レスピレーターにて調節呼吸をしたり、PEEPを掛けたりして、強力に患者をコントロールしたいときに役に立つ。サーボの自発呼吸及びCPAPはDemand valve typeで、患者の吸気時の吸気努力によりTriggerされ、吸気努力に応じた吸気量が押し込まれる。PSモードではより自発呼吸に近い形で補助呼吸が出来る。長期の呼吸管理の場合のweaningではSIMV+PSで行い、まずはSIMVの回数を落とし、次いでPSの圧を減じて、PSがゼロでやっていけたら人工呼吸器を離脱できる。短期の呼吸管理のweaningの場合には最初からPSモードで行い、人工呼吸器を離脱する。

インスピロン

  インスピロンはHigh flow typeの代表であり、加湿された空気(21%の酸素を含む)と純酸素を一定の割合で混合し、蛇管を通じて高流量の定常流を流して酸素療法を行うものである。

 全体の流量:純酸素流量+空気流量=混合気流量

 全体の酸素量:純酸素流量×1.0+空気流量×0.21=混合気流量×吸入酸素濃度

 例えば目盛りを35%にセッティングし、純酸素流量を8リッターにしたとすれば、21%の空気aリッターで総流量をbリッターと考え、a+8=b、0.21×a+1.0×8=0.35×bの連立方程式を解けばよい。aは37リッターで、bは45リッターである。

  インスピロンの加湿は霧吹きの原理で、小水滴にて行っているため、通常の人に使用すると、過加湿になる。

インスピロンにて加湿を行う適応

1、全麻挿管後--全麻挿管中は加湿が不十分であり、抜管後の痰喀出を容易にするため.

2、レスピレーター管理後--レスピレーター使用中は加湿が十分でなく、気道は乾燥し、痰が粘着になりやすい。そのため、レスピレーターを離脱できたら、しばらくはインスピロンによる加湿を行い、痰が柔らかくなり、十分吸引できた段階で抜管する.

  インスピロンによる加湿は粒滴が大きいため、過加湿となりやすい。そのため正確な酸素投与だけが必要な人であれば、通常のマスクかベンチュリー等を使用して酸素投与を行うほうがよい.

High flow typeとLow flow type

  High flow typeとは最初から一定の濃度の混合気を流し、Tピースもしくはマスクにて患者が自分の呼気を再呼吸しない程度の流量(定常流)を確保するTypeであり、通常の呼吸状態の人で40〜50リッターの流量が必要である。呼気を溜めないようにインスピロン用のマスクは鼻腔周囲の穴が大きく開けてある。

  これに対しLow flow typeとは純酸素を流し、患者の口鼻の周囲にて空気と混合させ、結果として吸入酸素濃度を上げようとするものである。酸素1リッター4%の吸入酸素濃度が上げられる。鼻腔カニューレは1〜5リッターの範囲で使用し、5リッターで約40%の吸入酸素濃度が得られる。5リッター以上の流量を鼻腔カニューレで流すと不快感が増加し、鼻腔内が乾燥するため、5リッター以上流したいときにはマスクを使用する。Low flow typeの酸素マスクは鼻腔周囲の穴が小さく開けてある。これはマスク内の酸素を逃がさないようにするためであり、5〜6リッターで40〜50%、7〜8リッターで50〜60%、9〜10リッターで60〜70%の吸入酸素濃度が得られる。マスク内で純酸素と空気とを混合させるため、5リッター以下の酸素流量では吸入気の酸素濃度が上がらないため、40%以上の酸素吸入が必要なときに、5リッター以上の酸素流量で使用する。

挿管

  呼吸停止の人には経口挿管を行い、まだ自発呼吸が有る人には経鼻挿管を行うのを原則とする。経口挿管の場合、女性では7.5mm・男性では8.5mmを用意しておけばまず間違いない。経鼻挿管では女性で7.0〜7.5mm・男性で8.0〜8.5mmを使用する。経口挿管チューブの固定は歯列で男性22cm前後女性20cm前後で良い。経鼻挿管チューブ挿入の目安は男性で26〜28cm・女性で25〜27cmである。経鼻挿管の場合,7.5mmがコネクターを5mmの気管支鏡が通る最低限の大きさであるため,気管支鏡を予定しているいる場合には出来るだけ 7.5mm 以上で挿管する.


2.循環管理

昇圧剤の使い方

  循環血液量が十分に足りているのに血圧が上昇しない出血性ショックのショック遷延状態や心機能低下により血圧上昇が見られない場合、大腸破裂やAOSCなどの敗血症性ショックにて術後も血圧が上昇しない場合には昇圧剤を使用する。しかし,いずれにせよ昇圧剤の使用は循環血液量が十分足りていることが前提であり、それは中心静脈圧測定やSwanz-Ganz Catheter挿入による肺動脈楔入圧測定にて確認しておく。

ドーパミン

ドーパミン300mg(3A)+生食85ml(3mg/ml)
(カタボンHiはドーパミン600mg/生食200mlである)
→1ml/時→300μg/h→50μg/m
(体重50kgの人で10ml/hで10μg/m、60kgの人で12ml/hで10μg/m)
ドーパミンは3〜5μgで腎血流量・腸間膜血流量を増加させるため,利尿目的などに使用する.5〜20μgでは血圧上昇作用がある.

ドブタミン

ドブタミン300mg(3A)+生食85ml(3mg/ml)
→1ml/時→3000μg/h→50kg/m
(体重50kgの人で10ml/hで10mg/m、60kgの人で12ml/hで10mg/m)
ドブタミンは血圧上昇作用はないが,心拍出量増加作用があり,中心静脈圧が高く、心不全傾向があるときなどに使用する.

ノルアドレナリン

ノルアドレナリン6mg(6A)+生食94ml(0.06mg/ml=60μg/ml)
(10ml/hで10μg/分)
ノルアドレナリンはドーパミン・ドブタミンを使用しても血圧が80mmHg以下の時に使用し,血圧を80mmHg以上に保ち,尿量を確保するために使用する.

ショック時の薬剤の使用法

  敗血症性ショック・出血性ショックを問わず、ショック状態が遷延するときはミラクリッドとステロイドを使用する。

ミラクリッド:ミラクリッド10万+生食100ml×3回/日
 ミラクリッドはショック遷延状態が改善し、昇圧剤を使用しなくても血圧が維持できるようになるまで、連日使用する。

ステロイド:ソル=メドロール1500mg IV(30mg/kg)
 ソル=メドロールは最初に一回使用し、6時間後にショック状態の改善が見られなければ同量を再使用する。それ以上は使用しても意味がないと言われている。


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