TASAKI normal 92/05/07 10:26:09
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92/05/07 10:26:09 TASAKI   放射線の雑学知識です。 たさき

  こんにちわ、川内のたさきです。
  連休中は、皆さんいかがお過ごしでしたでしょうか。
 私は、今年は夜勤3日を含めて、勤務についていました。
 私は原子力発電の仕事について、13年になります。
 原子力発電所とは縁の深い放射線や放射能のことも随分勉強してきました。
 今日は、放射線と放射能の様々な話を少し紹介させて下さい。
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 「放射線をいっさい受けたくない人は恋人とベッドには入れない????」
 
 放射能や放射線といえば、ガンや白血病の元凶で恐ろしいものだとの誤解がある
 ようですが、実はどちらも私達人間の身のまわりにありふれたものなのです。
 〔エックス線や電子線などの放射線を出す物質のことを放射能または、放射性物
 質といいます。〕
 人類は、地上の岩石や土壌の中の天然放射性物質から年間40ミリレム、宇宙か
 ら降ってくる宇宙線から35ミリレム、食物に含まれる天然放射性物質から35
 ミリレム、合計110ミリレムの自然放射線を一年間にうけています。その他に
 建物や土壌から発生するラドンによっても放射線をうけています。
 〔ミリレムというのは、人間への影響を考慮した放射線の単位です。〕
 
 宇宙線や土壌の放射線の強さは場所や高度により異なります。
 日本で、一番多い岐阜県では、119ミリレム、一番少ない神奈川県では、81
 ミリレムと一年間に38ミリレムの差があります。中国やインド、ブラジルのあ
 る地区では、500〜1000ミリレムの放射線を一年間に受ける場所もありま
 す。中国の自然放射線が高い場所(一年で550ミリレムと世界平均の約5倍)
 では、20年以上、延べ100万人年の放射線の影響調査が行われました。その
 結果、放射線が高い地域に済む人々の健康状態は、放射線が低い場所の人々に比
 べて、統計的に有意な差は無く、この程度の放射線では、健康への影響は無いこ
 とが判っています。
 
 病院で受けるレントゲン胸部検査では、一回に30〜100ミリレム、胃の透視
 検査では、500〜1500ミリレム、CTスキャナでは、200〜1000ミ
 リレムを受けます。
 米国のスリーマイル島発電所の事故は、西側諸国の原子力発電所の事故のうち最
 大の事故でしたが、周辺の住民の方が受けた平均放射線量は1.5ミリレム、最
 大の方で約70ミリレムだったとされています。当然のことですが、この程度の
 放射線量では、健康に影響は生じないことは、ご理解いただけると思います。
 
 先日、鹿児島のMARINEさんの意見のなかに、放射能の生物濃縮の話があり
 ました。たしかに、放射性物質に限らず重金属などの環境中の物質は魚や海藻な
 どの生物に取り込まれて濃縮されることがあります。しかし、どこまでも濃縮さ
 れていくわけではありません。というのは、生物は環境中の放射性物質を食物な
 どを通して取り入れる一方で排出もしますので、一定量以上は体内に蓄積されな
 くなるからです。この濃縮の度合いは、研究や調査により、生物や放射性物質の
 種類毎によくわかっています。また、発電所周辺では、電力会社はもとより、地
 方自治体も独自に放射線監視装置による監視の他、海底土、土壌、農水産物など
 を定期的に採取・分析し周辺の環境に影響がないことを確認しています。その結
 果は、県の広報などで公表されています。周辺の住民の方々のうける放射線の量
 は、実績で、0.1ミリレム以下と自然放射線の千分の一以下となっています。
 
 自然界には、古来、たくさんの放射性物質が存在しています。
 そのうち、人間と関わりが深いのは、カリウム40という放射性物質です。私た
 ちの体には、必須ミネラルとして、食品を通して、体重50kgの人で、100
 gのカリウムを体内に保有しています。このカリウム原子の一万個のうち一個は
 放射能をもったカリウム40です。このため、私達は、誰でも、百分の一グラム
 のカリウム40という放射能を体内に持っていることになります。放射性物質の
 量の単位に直すと約3000ベクレルになります。このカリウム40と同様に、
 炭素の放射性物質である炭素14も人間の体内には約2000ベクレル含まれて
 います。
 参考までに食品のカリウム40の濃度を示します。
 
    カリウム40の含有量  干ワカメや昆布 2000ベクレル/1Kg
                お茶の葉    1000ベクレル/1Kg
                干しシイタケ   700ベクレル/1Kg
                ポテトチップス  400ベクレル/1Kg
                牛肉       100ベクレル/1Kg
 
 チエルノブイリ事故の影響で、欧州にふった放射性物質は、セシウム137とい
 う物質でした。このセシウムは、カリウム40と同じ程度の放射線を出します。
 チエルノブイリ事故の影響のため、輸入食品の放射性物質の濃度の制限がありま
 すが、その制限は、1Kgで370ベクレルです。仮に、欧州からの輸入品が全
 て、その限度いっぱいのセシウムが混ざっていたとして、それを食べ続けても、
 一年間で、日本人が受ける放射線の量は4ミリレム程度です。欧州の食品が全て
 、限度一杯ではありませんので、実際に受ける放射線の量は、0.1ミリレム程
 度にすぎないと推定されています。また、セシウムは、体内に取り込まれても、
 100日程度でその半分は排出されていきますので、体内に限り無く蓄積してい
 くという訳ではありません。
 ある生協では、その一割の37ベクレルで自主規制していましたが、自然界の放
 射能の正しい知識があれば、そこまでの自主規制は余り意味のないことだと思い
 ませんか。
 
 人間は、自分の体内の、カリウム40などの放射性物質から、自然から受ける放
 射線の約20%を受けています。また、他人がごく近くにいると、自分の分以外
 にその人の保有する天然放射性物質からの放射線を受けることになります。
 余分な放射線はいっさいごめんだ という方は、恋人がいても、ベッドに一緒に
 入ってはいけないことになります。
                   せんだい  たさき
 

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