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キャバレーとユーロディズニー

 ロンドンからパリまで飛行機でわずか2時間足らずの距離である。現在ではドーバー海峡トンネルも出来て陸続きになったようなものであるが、距離は短くとも国から国を移動すると言うことは、それなりに緊張することでもある。しかしながらフランスの入国は、あれだけ苦労したイギリスの入国に較べると、パスポート片手に通り過ぎるだけの何ともあっさりとしたものであった。島国と大陸の違いだろうか?早速パリ郊外のシャルル・ド・ゴール空港からバスで市内へと移動する。ホテルで一息ついた後は、シャンゼリゼやエッフェル塔の近辺などをバスで見て廻った。夕食後にはオプションでキャバレー「ムーラン・ルージュ」に行くことになっていたのだが、誰もが疲れが溜まっているのかどうもいまいちやる気がないようである。ブツブツ言いながらもバスに乗り込み、店に到着して席に案内された。相変わらずの沈滞ムードが漂っていたが、ショーが始まるとそんな表情が一変した。出演しているトップレスのお姉さんたちがたまらんくらい美しいのだ。シャンペンの酔いも手伝って、ショーに魅了される我々であったが、ほんのさっきまで口々に「面倒くせぇ!」とか言っていたのが、ニコニコ顔を見合わせては「本当に来て良かったねぇ!」の繰り返しだった。大いに旅のインパクトを与えてくれたパリの夜の思い出を胸にホテルに帰ると、娼婦とおぼしき女性が「お兄さん、遊ばない?」と日本語で誰彼かまわず話しかけているところだった。それはともかくパリに行く機会があれば、キャバレーも男女を問わずお薦めしたい場所の一つだ。

 オプションでもう一カ所ルーブル美術館にも行かせてもらった。さすがにパリ名物だけあって、壮大なスケールを感じさせてくれる。しかしながら個人的には、自分たちでメトロ(地下鉄)に乗って出かけたオルセー美術館の方が雰囲気が良かったように思える。もともと美術品にはあまり興味がないので、パリに居るからと言って急に美術愛好家になるわけではないのだ。美術館はほどほどにして、開業後の業績が芳しくないと言われていたユーロディズニー(現ディズニーランド・パリ)に行くことにした。パリの郊外まで電車に乗って行くわけだが、切符を間違えて買っておりそのままでは改札口から出られないので、辺りを見回しながら乗り越えて行った。雰囲気は東京ディズニーランドとそんなに変わらないと思いつつチケットの購入にかかったのだが、ここで英語力の乏しさでかなり時間を食ってしまった。窓口の女性は、クレジットカードで買うと特典が色々あると説明しているらしかったのだが、そんなこと理解できるわけもなく粘りに粘って現金でチケットを購入した。ユーロの良いところは、どのアトラクションも空いてることである。10分以上待たされることはまずなかった。TDLでは待ち時間が長すぎてあきらめていた「スター・ツアーズ」をはじめ、嫌と言うほどアトラクションに乗りまくり、午後のパレードを見てからゆっくりとお土産を買ってユーロディズニーを後にした。

 その日の夕方からはシャンゼリゼに繰り出し、オープンカフェで夕食を取ることになったが、これまた気持ちの良いものである。フランス語の豆辞典を片手にメニューと格闘するのも非常に楽しかった。通りを行き来する若いパリジェンヌを眺めながら美味しい料理とワインを楽しむのは、このうえない幸せである。一つだけ閉口したのは、トイレの小便器の高さであった。日本に較べるとかなり高いので、戦後間もなくして生まれた我々のような短足世代には、背伸びをしないと届かないのだ。華やかなオープンカフェの裏側で、たかが小用につま先立って奮闘している我々がいたことを忘れてはならない。 

(00/4/22)