諸現象の解析


 この節では、デカルトの合理主義とパスカルの非合理主義によって諸現象を整理解析しょうと言うのであり、この寺小屋での一番の目玉で関心ある孫達との対話の場でもあります。それにこれはおじいちゃんの独断と偏見による事であり、多くの若い人々からの反論・討論を期待しております。

教 育  我が国の教育の流れについて考えて見よう。昔の寺小屋式教育は例えば吉田松陰の松下村塾など明らかにパスカル的教育であると考えられる。有能な人材が輩出していると同時に一般のレベルは低い。その後教育の平等化はデカルト的に平均レベルの向上に資した。しかしそれらが偏差値教育として現在非難を浴びている。今後望まれる事は、この高い一般レベルの中にあって個性を伸ばすパスカル的教育である。ケン玉日本一を無試験入学させた私大が一時話題を賑わせた事があるが、その後の追跡報告を知りたいものである。

撮影条件  おじいちゃんは画像工学が専門でしたので、その関係の述語が沢山出て来ますが、一般の写真と考えてもらっても結構です。
 画像工学の中でも放射線撮影系にあっては昔から現在まで撮影条件はその基本です。昔の徒弟制度にあっては撮影条件は名人芸に属し門外不出とされました。すなわちパスカル的教育でありましたが、学べば誰でも出来る撮影条件とする為学校制度となり、デカルト的教育で平均化が行われ現在に至っています。しかし現在レベルは5点評価で言えば、一般に3点くらいの評価は得られるが、名人芸にまでは達し得ない。最近パスカルをルーツとするファジィ推論が世を風靡していますが、撮影条件にも導入され名人芸をシミュレートした撮影条件決定法が提案されています。現在レベルの中でのパスカル的名人芸の誕生は大いに歓迎する所であります。

画像評価  画像評価はかっては個人のレベルの低いパスカル的主観評価によって行われていました。しかし近年のMTF,ウィ−ナ−スペクトル等の定量的評価技術の誕生と共にデカルト的な客観重視の評価法として現在に至っています。最近その評価法に個人の主観的な意見の違いを重視したファジィ測度による評価法が提案されています。これまた高度の評価法として重視されるべきでありましょう。

経済学・経営学  文系大学において、経済学部と経営学部(情報)を併設する所が多い。学問の内容から経済学部はデカルト哲学に、経営学部はパスカル哲学に基礎を置くと考えられる。したがって、将来就職先の部局の在り方によっては、夫々の哲学の雰囲気を身に付けた卒業生を対応させていると思われる。
 目を世界的な視野に転じて見ると面白い。各国の政治的な動向にしても、このデカルト主義、パスカル主義の交替劇は世人のよく知る所です。自然科学・人文科学・社会科学はもとより、芸術に至るまでその範疇から一歩も出ない。デカルト思想は左脳的・ディジタル的・秀才的であり、パスカル思想は右脳的・アナログ的・天才的です。双方相俟って学問も文化も政治も前進を続けるものでしょう。

診 断  まず診断のプロセスから考えて見よう。
 医師は患者の主観的主訴と技術者のデカルト的客観データとを総合して医師のパスカル的診断が行われます。そして神の摂理(意志)に従った真の診断を究極の理想としています。従って、技術者はあくまでデカルト的な手法をもって客観的データを求める事が要請されます。医師は主観的データと客観的データを総合して、己の主観によって診断を行う事が義務付けられます。ここに医師の優れた感性による主観が神の摂理に従った名医を生むと考えられます。
 この診断のプロセスにおいて幾つかの考えるべき問題があると思われます。

 最近の臨床検査データ(生化学・血液学・免疫学等)を見てみよう。従来は単なる点情報であったものが現在では点情報の占める位置のみならず、基準値の上限・下限の正常範囲を示す事によって医師の主観的診断に資する所が多い。放射線領域においても医師の読影による診断は主観的です。従来は客観的な数値(濃度分布)データによる診断支援のみてしたが、最近のCADによる支援は臨床検査におけると同様な事を思い着かせます。

 すなわち、濃度分布情報にCADによる正常基準値の範囲を示す事によって、疾患の良・悪性のクラスを示唆する事が出来るならば医師の診断に資するところが大となるでありましょう。従って、将来は臨床検査と同様にフィルムにCADによる診断支援を添付して医師に提出するようになる事が望ましい。CADは高度な学問背景をもつが、現在博士過程まで予定されている大学では十分にその責めを果たす事が出来よう。

 最後に医師は徒にデータに惑わされる事なく、あくまでも己が主観を信じ、データとデータの行間を読むごとき感性豊かな診断を心掛けて頂きたい。何故なら、主観性は汲んでも汲んでも尽くせない泉であり、主観性によって機械に対する最終的な人間の優位性が保証されると言えるからです。 

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