一昨年5月15日に脳梗塞で倒れてから満2年を過ぎましたが、その間は勿論の事当分は再発を警戒して成る可く他出せず、用心に努めて来ました。その為学会にも出席出来ず、内外共に残念な思いをして参りました。殊に地域の方々にはお世話になるばかりで何かボランティアで気持ちだけでも示せたらと常々考えておりました。
ところが最近の事、一ヶ月に一回出ている”広報 あや“ に ”あや コミュニティ・スクールの校長を求む“ の記事が出ていました。勿論ボランティアです。対象は綾中学3年生との事、この年になって幾世代も異なる子供に話す事など場違いも甚だしいと思いました。またそれに適した人物もおられるかとも思ったのですが、話を聞いてみると”開会の挨拶・校長講話・修了証書授与・閉会の挨拶などで後は適宜見て頂ければよい“との事、それくらいならと”末席候補者としてお考え下さい。“と連絡しました。
他に二人おられると聞いていましたので安心していましたところ、、私に決まったとの連絡、驚くと共に多少慌てました。講話として中学3年生に 情報の話・デジタル画像の話・放射線の話などをその程度に応じて話す事は限られた時間では無理と思いました。結局、”デカルトとパスカル“の話はーこれも決して楽ではありませんがー数学を使わないで話せるので良いかと考えました。
幸い私のホームページがありますので、これを部分部分投射して話そうと言う事にしました。会場の 綾 ふれあい合宿センター に行って見ましたが、会場に電話回線が入って無くホームページはCD-ROM でなければ不可との事、そこで早速何時もお願いしている岐阜大の原助教授に頼んでホームページの CD-ROM を作成送付して頂きました。プロジェクターなどは綾中から運ぶなど大変お手数をお掛けしました。
コンサイス英和辞典でcommunityをひいてみました。一地域の独立社会・共同生活体とあります。米国ではcommunity college 地域短大(特定の地域社会の必要に応じた課程を満たすために設立されたもの)となっています。要するにデカルト教育に対するパスカル教育と考えれば納得がいきます。地域に根付いた教育をする学校と考えれば、この3泊4日のプログラムも理解出来ます。
プログラム全部をご紹介出来ませんし、また全プログラムに出席したわけでもありませんので、特色あるものを2〜3述べてみましょう。講演では前田町長の”中学生に期待する事“・三戸サツエの”猿社会の掟“・三宝 裕の”能力開発講座“・綾町ものしりフォーラムとして井上隆広の”綾町の文化について、“郷田美紀子の”風土に学ぶ“・内田校長の”デカルトとパスカル“・その他特別文化講座として井上清春の”フォークソングの楽しみ方“・また地区別生徒集会の時間が設けられ”自治公民館長と語る“など地域に密着した目次でした。”デカルトとパスカル“だけが異質かなと不安でしたが、後述するように反響はあったようです。
特色ある体験実習として学校教育では得られない次の様なプログラムがありました。香川文徳のアウトドアクッキング(おにぎり、ピザパイ、豚の石焼き、ごぼうと地鶏の竹蒸し)・向井好美の自然生態系農業体験として田植えの実習・玉田千津子、阿万博和の綾の生活文化伝承講座として(灰汁巻きをつくろう)などなどです。
その他毎晩、班長会・実行委員会で反省が行われ、それらは生徒に伝達され、各自日記の資料とする。この様な共同生活はたった3泊4日であっても得難い経験です。私は旧制高校で3年間全寮制度のもと共同生活をやむなく送りましたが、実に精神的にも肉体的にもその後の人生に益するところ多かったと感謝しています。
あや コミュニティ・スクールの企画・準備・指導・諸経費など全て綾中学校の校長を初めとする全職員によって施行されたもので、全くボランティアの精神に基づくものです。表には見えませんが、これら縁の下の力持ちの先生がたに生徒も父兄もこぞって感謝仕様ではありませんか。デジカメで沢山撮られた写真を送付頂きましたので、その中で面白そうなものを並べて見ました。また最後に”デカルトとパスカル“の講話についての感想などを数編載せて見ました。また、文中敬称は全て省略させて頂きました。ご寛容下さい。
尚、綾中から送られて来たデジカメの画像は高解像度で美しかったので、画像をクリックすれば拡大画像とテロップが出るようにしました。お試し下さい。
「中学生に期待すること」と題する前田 穣町長の講話です。25日の19:30からの予定でしたのでそのつもりで出席したところ、既に始まっていましたので人の邪魔にならないように暗い中ソッと後ろの席に着きました。町長の都合で30分早く始まったとの事でした。選挙前でお忙しい最中ですのに良く遣り繰りして出席予定して頂けたとお礼を申し上げたい気持ちで一杯でした。
”綾町には内田先生の様な有名な学者・文化人が住んでおられる。・・・・・・・・・“飛び上がらんばかりに吃驚しました。町長は私の方を見て言われたものだから、生徒は一斉に私を見る。感心しました。私など講演している時、会場にいる人の識別は出来ません。余程小人数でプライベートな会ならいざ知らず、この様な会場で識別しておられたとは到底私など及ぶところでない。やはり長となるべき人物は違うと、講演そっちのけで感心する事しきりでした。
講話終了後、改めて厚く厚くお礼を申し上げた事は言うまでもありません。綾町は人口8000人足らずの小さな町ですが、教育に熱心で綾町育英会を組織して高校以上の生徒・学生に学資の援助をしています。コミュニティ・スクールの実施にしても今年は2回目で取り組みが早くその意気組みが伺われます。
プログラムでは校長講話の前に挨拶とか校長紹介とかがありましたが、どれがどうなったのか直ぐ講話に入って仕舞いました。なにしろ一日駅長のようなものですが、それにしてもコミュニティスクールの校長ともなればそれらしい姿勢と態度が必要です。過去に大學学部長の経験が6カ年ありますが、また旧制中学の教員の経験もあるのですが、校長と名が着くのは初めてです。挨拶抜きで講話に直ぐ入ったのは返って良かったのかも知れません。
15〜16才位の子供に”デカルトとパスカル“の話を直接ぶっつけるのは無理であろうし、意味もないだろうと思い、初めは”おじいちゃんの写真館“に掲載されている写真とか”マヤンの呟き“の私の過去の出来事を写真を中心に話しました。一時間半の内、一時間位をこれに当て、ある程度関心を持った所で後30分を本命の”デカルトとパスカル“に当てました。
多少順序を考えていたお陰でスムースにデカルト思考とパスカル思考の違いを説明出来ました。後ほど送られてきた感想文によっても、幼い年頃ながらなにか得るものがあったように感ぜられました。勿論、院生のレポートに見られるように確とした意識の啓発までは到底無理ですけれども。
終了後、一女子生徒が訪ねてきてもう少し詳しく知りたいと申し出て来ました。丁度ホームページの全プリントを持っていましたので、躊躇無く貸しました。プリントしてゆっくり読めばきっと理解が容易であろうと思ったからです
3泊4日のコミュニティ・スクール、アッと言う間に終わり今日は閉校式です。以下24日から27日までの写真の一部を掲載しながらプログラムを簡単に説明していきましょう。写真は綾中の先生によるデジカメの約160枚の記録から適当に選んで載せたものです。
終了証書授与式では生まれて初めて証書を一人一人何人か纏めてですが、生徒代表に手渡しました。曾孫の様な年頃の子供に見つめられての証書授与・終了の挨拶は何か場違いのようなくすぐったい気持ちでしたが、それでもこの3泊4日の行事を良く無事に全うしましたと惜しみない賛辞を述べました。
そしてこのコミュニティ・スクールの立案・計画・諸連絡・諸交渉・諸準備を進められた校長はじめ教職員の方々に厚く厚くお礼を述べて終了の挨拶としました。
当日ですので、十分事前指導が行われたようです。夕食(バーベキュー)を兼ねて地区別生徒集会があり、自治公民館長と語る会が催されました。きっとおじいちゃん達との話は楽しかった事でしょう。綾町ものしりフォーラムの「綾町 文化について」と「風土に学ぶ」は是非聞きたかったのに聞けず残念でした。
初めての夜、なかなか寝付かれなかったでしょう。私も遠い遠い昔の懐かしい思い出です。
いよいよ二日目です。寝不足の寝ぼけ顔で出てきた子もいたことでしょう。今日の本命「能力開発講座」は午前午後に亘って行われました。私も初め少し出席して聞いて見ましたが、どうも付いていけず残念でした。
午後のアウトドアクッキングは楽しそうでした。おにぎり・ピザパイ・豚の石焼き・ごぼうと地鶏の竹蒸しなど綾の食卓を賑わすものばかり、併せて後かたづけ・指導者へのお礼など食事のマナーも学びます。
夜学は町長の「中学生に期待すること」綾町のパンフを参考にして、自分たちの住む町の認識を深め大事にしたいとの願いを訴えられました。
いよいよ3日目です。合宿もいくらか慣れてきてプログラムも面白そうです。午前中は自然生態系農業体験として、「田植え」の講話と実習です。写真に見られる様に泥んこになっての実習はさぞ楽しかった事でしょう。私など大阪のど真ん中の小・中であってみれば「米のなる木」を知らずに育った子供時代と違いなんと幸せな子供達だろうと羨ましくさえありました。
午後は綾の生活文化伝承講座として講話と実習がありました。「灰汁巻きをつくろう」をテーマに沢山の灰汁巻きが出来上がりました。一つ頂きましたが、子供達が作ったと思うと心にしみじみとした味でした。
夜は特別文化講座として「フォークソングの楽しみ方」の講話と実習でした。残念ながら出席出来ませんでしたが、最近の子供達はテレビなどで馴染み深く、合宿最後の夜を満喫したであろう事は間違いありません。小憎らしいほど気の利いたプログラムであると感心しました。
きっと今夜は快い眠りと楽しい夢が訪れる事でしょう。
3泊4日の最終日です。開校日の何か不安げなおどおどした態度が閉校日の今日は安定した自信らしきものが身についた感じでした。育ち盛りの子供達にとってたった3泊4日でも大きなインパクトが与えられたのでしょう。目出度し目出度しです。
午前中は特別講演「猿社会の掟」です。私も一度伺った事がありますが、幸島自然苑苑主のお話だけあって子供達の心に印象深いものを植え付けたに違いありません。
午後はこの3泊4日のコミュニティスクールを振り返って、それぞれ各自反省と得られた教訓を纏めました。
閉校式では修了証書授与がコミュニティスクール校長から行われ、生徒達に惜しみない賛辞と限りない期待が述べられました。また生徒代表からも先生方に深甚の感謝とこれを期に更に新しく発展する決意を述べました。
以上でコミュニティスクールの全行事が終了しました。生徒達は解散になりましたが、この行事を世話された教職員は後片づけや後始末に遅くまでかかっておられたと思うと感謝しても感謝しきれません。本当にご苦労様でした、有り難う御座いました。
数日して綾中学校 校長および第3学年職員一同様からお礼状を頂きました。その中に「生徒のお礼の手紙」が同封されていました。私からのお礼の気持ちを込めて何通かを匿名で掲載させて頂きます。
Tさん
拝啓敬具
Yさん
拝啓敬具
O君
拝啓敬具
Nさん
拝啓敬具
I君
拝啓敬具
Yさん
拝啓敬具
A君
拝啓敬具
T君
拝啓敬具
読後感
内田 勝
初めてコミュニティスクール校長と言う重要な席を与えられ、それ相応の心構えをする時間もなく、ただ用意されたプログラムに流された感の3泊4日でした。従って、学校から送られてきたこのお礼状には多分の関心がありました。上記の様な文章から年齢相応の反響があり、まずまずの成績であったとホッとした次第でした。
サッカーW杯の熱狂が終わって見れば、ドイツ カーン率いるデカルト軍団がブラジル パスカル戦士3Rのロナウドにより打ち負かされた結果となりました。これは単にパスカルがデカルトより勝っていると言うことではなく、デカルトの基礎の上にパスカルの優位性があって初めて得られる栄冠であろうと痛感した次第でした。
これは講話でも話したかと思いますが、会社でも特色を持たないデカルト的な人よりも何か特技を身につけている人の方が生き残りに強いと一般的に思われます。けんだま日本一の受験生が無試験入学した東京の私大がありますが、その後の追加報告を知りたいものです。
今回のコミュニティスクールの経験は年齢相応に素晴らしいインパクトがあったと思います。この印象を大切にして、将来の大きな希望に向かって驀進してください。「美しい水は美しい人を作り、美しい心を育てます。」綾に生まれた事を誇りにし、のびのびと大きく育って下さい。
諸君の限りない健康とたゆまざる研鑽を心から祈ります。